第5章 奥州の竜
元親の探し物…それは雪乃が森で失くしてしまったかもしれないと言っていた彼女のネックレスだ。
可能性はかなり低いだろうが、交易品の中に混ざっている事も考えられなくはない。
意外な条件に政宗は少し驚いたが、すぐに雪乃の事を思い出した。
「…あの女へのgiftか?」
「…!」
南蛮語は理解出来なかったが、ニュアンスで何となく察した元親。
それよりも気になったのは…
「…アンタ、もう雪乃に会ったのかよ?」
「ほぉ…あの女、"雪乃"っていうのか」
「………」
その言葉に余計な事を口走ってしまったと後悔する。
なるべくなら雪乃を政宗には会わせたくなかったが、まさか自分の知らないところですでに対面していたとは…
「…で?あの女は何者なんだ?」
予想通り食い付いてきた政宗。
ここは当たり障り無く、雪乃は戦で帰る場所を失った只の町娘だと答える。
「そんなヤツこの国には他にも沢山いるじゃねぇか。なんであの女だけ特別扱いなんだよ?」
「…アンタにゃ関係ねぇだろ」
「確かにそうだが…あの女南蛮語を理解しているようだったから気になってな」
「………」
(雪乃のヤツ…今度は一体何をやらかしやがった…)
政宗の言葉に思わず舌打ちしそうになる。
けれどここは平静を装わなくては…
「アイツの話はもういいだろう…。で?船は何隻必要なんだ?」
「………」
話を逸らした元親にこれ以上聞いても無駄だろうと諦めた政宗は、再び話を戻し彼と交渉を続けた…
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