第4章 食事
「何かいいの見つけたのか?」
店の主人と話し終えたのか、キバナさんがこちらに戻ってきた。
「はい、このチャームを買おうかな、と。」
持っているチャームを見せると、キバナさんはそのチャームを手に取り、そのままレジの方へと向かっていった
「き、きっ、キバナさん!?」
「あー、さっき話して店主が安くしてくれるってよ。だから気にすんな」
そのままチャームはレジを通り、可愛らしい包装に身を包んで私の元へと戻ってきた。
この包装用紙かわいいな……じゃなくて
「わ、悪いですよ……」
「いーから受け取ってくれ。な?」
ポンポン、と頭を撫でられ、私は何も言えずそのまま頷いてしまったのだった
ーーー
「うう、ただいまぁ…」
家に帰るや否や、ベッドに飛び込む。ああ、安心する。この安心感が大好きだ。
ゴロリと寝返りを打つと、朝取り出したポストの中に入っていたチラシが視界の端に移り、あの時のことを思い出す。
今でも鮮明に思い出す、最後の試合。
「ヴィー!!」
戦闘不能になってしまった相棒に駆け寄る。周りの試合終了のアナウンス、観客の声は一切頭に入ってこなかった。
敗けた。
早く回復させてあげないと。
終わった。
これで最後。
もう 試合は
思考はそれで埋め尽くされていた。
ジムチャレンジの期間ギリギリ最後の試合だった。
相棒をポケモンボールの中に入れると、試合相手のキバナさんが近づいてきていた。
私は精一杯の、感謝を込めて。
他の感情に押し殺されてしまわないように、声が震えないように、彼の目を見据え、泣かないように笑いながら
「ありがとうございました」
その一言を振り絞った
………
その後の事は、あまり覚えてない。
ただひたすら泣いて、泣いて、諦めがついて、就職して……そんな感じだった。
今ではいい思い出、と捉えようとしている
「…おふろ、はいろ」
お風呂の準備をして、ふとカバンから今日貰ったチャームを取り出す。
キラキラと光を反射するそれを少し見つめた後、机の上に置いてお風呂へと向かった。
カバンの中でスマホに通知が鳴っているのに気がつくのは、しばらく時間が空いてからだった。