ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第14章 迷子はダイブ
小さく吐き出される溜息に何も返す言葉は見付からず立ち尽くしていた私は
『…………全くさ、どうしたらこんな簡単な道で迷子になれるのか逆に聞きたいよ。』
スマホ越しに響く声をそのままに突如屋根から飛び降りて来た人影に驚いて盛大に腰を抜かした
「……………っ!!!!!!!」
日常を過ごしていて上から人が降臨する事なんて有り得ない光景に悲鳴は声に成らず
へたり込んだまま目を見開いた私を大層気だるく見下ろしていたのは頼もしい彼だった
「馬鹿だ馬鹿だとは思っていたけど……。」
溜息を付きながら「たった2回角を曲がるだけ」なんて淡々と説明をした後に「迂闊に動くな」と短く説教をした彼はそれでも
「本当に沙夜子は世話が焼けるよね。」
柔らかな声色で名を呼んで真っ直ぐに大きな手を差し出してくれた
長く艶やかな髪が肩を滑って際立つ白い肌
くっきりと輪郭を示す猫目がちな瞳が促す様に細められ
おずおず手を伸ばせば力強く引かれて私は途端に彼の胸へと飛び込んでいた
「………怪我は?」
淡白ながら優しい声が安堵と共に身に染みる
「大丈夫です……ありがとうございます」
ドキドキと高鳴る心臓をそのままに小さく答えた私は
「じゃ、行こうか。」
しっかりと繋がれた手が無性に嬉しくて何だか少し泣きそうになった