ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第14章 迷子はダイブ
普通水路なんて聞くと足を浸けて遊べる様な場所じゃない、と思ってしまうけれど
そんな概念を打ち砕く様に一切の濁り無く透き通った水はサラサラと流れていて
「……私達もちょっと遊びません?」
童心を擽る雰囲気に彼の様子を伺えば彼は意外にもすんなりと頷いた
ジーンズを捲ってチャプチャプと水面を揺らす足に心地好い冷たさが広がる
「気持ち良いですねー!」
「ふーん。」
ちぐはぐな会話はいつもの事で単調な声にこっそり笑いながらも水面に視線を落とした
………当然の事だが彼の足は私と比べて大きい
身体が大きいのだから其れに比例するのは当然の事だが彼の手足は大きいのだ、と時々実感する
そして実感する度に頼もしさを感じて安堵に充たされるのだ
静かに、しかし確実にドキドキと早まる鼓動
チラリと盗み見れば体重を支える様に付かれた手に薄く血管が浮いていて
何を考えるよりも先に触れたいと思ってしまった
タイミングを見計らう様におずおずと彼を見上げれば水面の反射に睫毛を薄く持ち上げた瞳が私を真っ直ぐに見詰めた
彼の印象的な黒い双眼には私だけが映って雑踏が遠くなる
サラリと一束落ちた前髪を悠々かき上げながらも視線は注がれたままで、世界中に私達二人だけの様な錯覚に陥った
弓なりな眉の些細な仕草だけで「何?」と問う彼に声を発する事もままならずどれだけ見惚れていたのだろう
気が付く頃にはふわりと彼の香りが鼻を掠めて耳に触れそうな距離で感じた吐息
「そろそろ行こうか。」
小さな囁きが残されたと理解した時には何の変哲も無い言葉なのに頬が熱くなってしまって
何故今のタイミングで囁いたのだろう…………
なんて推し測れる筈もないのに見詰めた先の彼はいつもの余裕を漂わせたまま
「随分無口だね。」
クスリと小さく笑った