ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第39章 持ち切れない愛とありがとう
知らない匂いのする世界で寂しさに押し潰されてしまいそうな夜
忘れもしない……山の途中で見上げた満天の星空の下で私は親方の姿に癒されて
そしてこの子の為にもと一歩一歩踏み出したのだ
親方への愛は勿論、他愛ない雑談も、誰にも言えない弱音も、馬鹿みたいに浮かれた惚気話も、涙声の願いも
親方はずっとずっと誰よりも全てを知っていた
私の手のひらで眠る親方に涙の雨が降る………
「うぁあ"っうぅ……、親方…っぁぁああ……っ!」
次々浮かぶ親方との思い出に胸が裂かれそうに痛くて、親方との別れがただ辛い
現実を受け止められずに大号泣している私はただ子供みたいに事実を拒否していた
この世に不老不死はない
私より強い彼だって不老不死ではないし私だっていつかは終わりを迎える
私よりも小さな親方はもっとずっと早く生涯を終えてしまう
そんな事は分かっていたけれど………
素知らぬ顔する親方にお喋りをする毎日がもっと続くと思っていた
隠す事なく泣き濡れる私の隣で彼は何故だが本のページを捲っていた
「沙夜子、ハムスターの平均寿命は2、3年なんだよ。」
「ぅう"………グスッ……」
それは私がいつか買ったハムスターの飼い方の本だった
「そこから計算するに親方は生物学者が取り合うくらいに異様に生きた。」
「わ、私が……っ……いつもぅう"っ心配掛けてたからかな"ぁ……っグスッ」
「さぁね。理屈は知らないけれど、とにかく……大往生だよ。」
グズグズ鳴る鼻もそのままに親方に視線を落とせば、可愛い姿は変わらないけれど確かに出会った頃よりずっと年老いていた
「………〜っぅぅ"……大往生かぁ"……そっかぁ……!」
私の傍にずっとずっといてくれた、癒やしと強さをくれた一匹のハムスターは本当に驚異的に他のハムスターの2倍長い生涯を送って今夜虹の橋を渡った