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〈H×H パロ〉ホストクラブ【幻影旅団】

第4章 +アルファ/夢主はイルミの幼馴染


イルミは湯気の蒸す浴室で 外の荒れる豪雨の音を聞いていた。
たっぷり湯を張った浴槽に身体を水平に沈め 顎の先までを水面下に埋める。こういう場所の風呂の容積はそこそこ広いもので、大の男が入るにしてもそれなりの余裕があった。

この仕事をしていると成り行きで“泊まる事”は少なくない。相手は不特定多数で ノリで流れた同業者であったり、身体の繋がりだけの相手であったり、指折りの重客である場合もある。
仕事の一部や付き合いによる所も大きいが それに比較しても今晩の相手はあまりにも色気がないと感じざるをえなかった。そういう意味ではどこか拍子抜けをしてしまう。
今だってどうこうする気はないが もしかしたらそれを見透かしているのかと問いたくなる程のユイの警戒心のなさには、言いたいことがないわけではない。イルミは身体が温まる程度に入浴を終え浴室を出た。

備え付けの簡易着を借り ドライヤーで髪から半分くらい水分を飛ばした後、しんと静まり返っている部屋に足を戻した。




「この状況で寝るかな 普通。」

長湯であったつもりは毛頭ないのだが。自分の声だけが虚しく残った。
ユイはベッドの枕元で布団にも入らぬまま、背中を小さく丸めて眠りこけていた。
どうこうする気がないのはお互い様、きっとユイの方にはそんな発想すらないのだろう。金を払ってでも偽りの愛が欲しいとせがむ女は山程いるのに 無知なユイには偶然が導いたこのシチュエーションがどれだけ貴重で羨望の的になるかも理解出来ていないのだ。
スッと近付き ユイの横顔に視線を落としてみる。

周りは山ばかりのあの田舎で育ったユイは 今日一日で今までにない色々な体験をした筈だ、心身共に疲れ果てているのは当然だが 何を根拠にしていると言うのか、ユイの穏やかな寝息は安堵を物語っていた。

結局ユイは私利私欲に汚れたこの都会を生きるには 無防備過ぎると思う。服や髪型は上辺だけのメッキで 存在その物は異分子にしかなり得ない。正体がバレればすぐに身包みを剥がされ いい餌にされるのが目に見える。

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