第6章 恋の歯車、回り始めました〈カラ松〉
『カラ松くん・・・・・すごい格好だね。』
「だろー?花子ならこのパーフェクトファッションを分かってくれると思っていたぜぇ。」
なんて屈託のない笑顔を見せられてしまえば、今更“違う服に着替えてきて”とは到底言えなかった。
因みにそのすごい格好とは、カラ松くんの顔がプリントされたタンクトップに、青いスパンコールが散りばめられたパンツのことである。すれ違う人皆が二度見していたが、彼は全くと言っていいほど意に介していなかった。
あの風邪から1週間後カラ松くんが天然水を汲んで帰ってきたが、その水を飲む頃にはすっかり私と十四松くんの熱は下がっていた。
そしてあっという間に1ヶ月が過ぎ、世の学生たちは夏休みを迎えたようだ。社会人にはもちろん夏休みなんて存在せず、私は働き詰めの毎日を過ごしていた。
いつにも増して外は暑く、家からまだ数分しか歩いていないというのにツーと首筋には一筋の汗がつたった。
そんな中、私たちは働き始めた一松くんの猫カフェに遊びに行くのだ。いや、正確に言うならばちゃんと仕事をしているのか偵察に行くのだ。(もちろん一松くんには内緒です。)
「未だにオレは信じられないんだ。あの一松が働いているなんて。」
『オーナーの話だと、一松くんのおかげでお店の売上が上がってるみたいだよ。』
「あの一松がなぁ。俄に信じ難い。」
カラ松くんは首を捻る。
紹介しておいてなんだが、まさかこんなに一松くんが働くとは私も思っていなかった。少し前までニートだった一松くんが嘘のようだった。
週一勤務のはずがあれよあれよと増えていき、気が付けば週三で猫カフェに勤務しているのだ。
『まぁ、一松くんネコ大好きだしきっとネコと戯れながら楽しく働いてるんじゃないかな?』
このときの私は本気でそう思っていた。