第1章 ♥︎ ONCE ・ AGAIN ♥︎
「…め、ろ」
翔ちゃんの声が微かに聞こえた気がして
俺は潤くんに顔を近づけるのを躊躇った。
けど、もうキスしようとしてた思いは
止まらなくて、怒りのままにまた近づけるの。
そしたら……。
「やめろって言ってんだろ…っ!!」
「しょ、ちゃん…?」
「やっとかよ…」
翔ちゃんが俺の腕を引いて、潤くんから
引っペがして自分の元へ引き寄せた。
ぽすんと音を立てながら、翔ちゃんの
胸の中に入るとドクドクって心臓の音が
聞こえてきて、ドキドキしちゃう。
こんなに翔ちゃんのこと男らしいって
カッコイイってそう思ったのは、
出会った時以来かもしんないな…。
「あとは二人で何とかしろよ?」
「潤、どういう意味…」
「詳しくはニノから聞いてくださいよ、じゃ」
そう吐き捨てて、潤くんは役目を終えたと
颯爽と生徒会室を出ていってしまった。
…なに、え、カッコよすぎない?
自然と部屋に流れる沈黙。
お互い顔を見合わせるように向き合って。
俺から口を開いた。
「ごめんね、翔ちゃん。嘘なの」
「はぁ?」
「俺が相談したんだ、翔ちゃんとキスしたくて」
「お前なぁ…」
「ごめん」
俯くと、ぽんって優しく頭の上に触れる
翔ちゃんのおっきな手。
ぐしゃぐしゃって掻き回されたかと
思ったら、顔を上げられて。
「俺こそごめん。不安にさせて」
「…っ、我慢出来なかったんだもん」
「うん、俺もだよ。だからもう健全になんて言わないことにする」
そう言われたかと思ったら、
ふわっと唇に触れた暖かいもの…。
真正面には、綺麗な睫毛を伏せた翔ちゃんの顔。
…俺、キス、されてる。