第10章 烏野の守護神
ついこの間、青葉城西との練習試合を取り付けてくれたばかりなのに、もう次の練習試合先を見つけてくれたということだ。
武田先生は、バレーは初心者だと言っていた。
それなのに、こんなに一生懸命取り組んでくれている姿に胸が温かくなる。
どこと練習試合を取り付けてくれたのだろうかと、ワクワクする胸を抑えながら武田先生の言葉を待っていると、そこから発せられたのは予想もしない学校の名前だった。
「東京の古豪、音駒高校。」
『···ぇ。』
「音駒ってあの、ずーっと烏野と因縁のライバルだったっていう···?」
「うん、確か通称···ネコ。」
烏野と音駒ってライバルだったんだ?とか、通称ネコって呼ばれてたんだ、とか、すっかり真っ白になった頭の片隅で考えながら、何度も頭の中で繰り返す。
スガ先輩が、監督同士が因縁だとか、ゴミ捨て場の決戦だとか教えてくれているけれど、全然内容が頭に留まってくれない。
音駒高校、音駒高校。
音駒高校って、あの音駒高校?
『音駒!!?』
「わ!ビックリした。ちゃんどした?」
つい口から出てしまった大きな声に自分でも驚いて、思わず両手で自分の口を塞ぐ。私の声に驚いたスガ先輩が顔を覗き込んで来た。
「音駒高校、しってるの?」
真っ白になっている頭を何とか動かそうと思案する。
えっと、えっと。
『わ、私の幼なじみが、音駒に。』
「え!?そうなの!?」
またまた驚いているスガ先輩。というか、落ち着いて周りをよく見回してみると、皆こちらを見ている。大きな声を出してしまったし、当たり前か。恥ずかしい。スガ先輩とは違う側の隣に立っていた蛍を見上げてみると、こちらも驚いた顔をしている。
「でも、音駒って東京だよ?」
『私、高校に入る時に宮城に来て、それまではずっと東京にいたんです。バレー部のお手伝いをしていたって言うのも、音駒高校でお手伝いしてたんです。高校も、宮城に来なければ音駒に行ってました。』
「···そんな偶然あるんだな、驚いたな。」
澤村先輩も驚いた顔をしている。
それにしてもそうか、音駒高校と練習試合。
ということは、研磨もクロちゃんも宮城に来るんだ。
「音駒ってどんなチームなんだ?」
頭の中の情報が処理しきれずにぼーっとしていると、影山くんから訊ねられた。心做しか目がキラキラしているように見える。
