第11章 オマエが好きだ
1時間くらい走ってから家に戻ってくると、案の定花子はオレのベットでぐっすりと眠っていた。子供のような寝顔は昔から変わらない。
数学でもやるか、と勉強机に向かったとき異変に気付いた。
『・・・・・はぁっ、・・・・・はぁっ、』
花子の息が荒く、うっすら頬も赤い。まさかと思い、おでこに手を当てると、やはり熱い。
頭を使ってだるいんじゃなくて、風邪でだるいんだよ、バカめ。そう思ったが、きっと昨日雨に濡れたのが原因だろう。そうなると責任はオレにある訳で・・・。
「全く世話の焼けるやつなのだよ」
ベットに腰掛け、火照った体の花子をゆさゆさと揺らしてみる。
「オイ、花子。・・・花子っ。」
少し大きめな声で呼びかけてみるが、眉をしかめるだけでなかなか起きない。仕方なく無理矢理ベットから体を起こすと、うつらうつらしながら花子が目を開ける。
「大丈夫か?」
『うん、だい・・じょ・・・』
そこまで言うと花子はどさっとオレに全体重を預けてきた。
「オイ、しっかりするのだよ」
『・・・・・。』
「オイ、」
意識が朦朧としている花子に再び声をかけると思いもよらない言葉が返ってきた。
『・・・・・ギュって、はぁっ、・・・・・して。』
「なっ!!!」
オレは耳を疑った。
とうとう頭までおかしくなってしまったのか、とも思った。
ただの幼なじみは抱きしめたりしないが、好きな女に言われて、断る理由も毛頭ない。
だが、こんなに弱っているときに、ましてや想いも伝えていないのに簡単に抱きしめてもいいものなのかと悩む。
『・・・・・はぁっ、・・・・・はぁっ、』
相変わらず肩で息をしている花子に理性もギリギリになってきたときだった。
『昨日は、してくれたじゃん』
その一言でオレの理性はどこかへと消えていった。