第10章 ただの幼なじみ
そこに座るみんなが一瞬、ときが止まったような感覚に陥った。
『いやいやいやいや、付き合ってないよ。ただの幼なじみ』
そう答えると火神くんはニヤリと笑った。
「オレ、オマエ結構好みだわ。」
『へっ!?』
急だったとは言え、なかなか自分でもびっくりするくらい変な声が出た。
「すいません、山田さん。火神くんアメリカ育ちでストレートなんです。気にしないでください。」
びっくりしたーと、肩を撫で下ろすと真ちゃんのイライラした声が私に向けられる。
「さっさと食え、バカめ。」
ここで真ちゃんをなだめようと黄瀬くんが話し出す。
「負けて悔しいのは分かるっスけど、ほら、昨日の敵はなんとやらっス!」
「負かされたのは、ついさっきなのだよ!」
しかしそれも逆効果。
「むしろ、オマエがヘラヘラ同席していることの方が理解に苦しむのだよ。一度負けた相手だろう」
「そりゃ、当然!リベンジするっスよ。」
インターハイの舞台で、と黄瀬くんは付け足すと黒子くんと火神くんを交互に見た。そして再び火神くんはニヤリと笑った。
「望むところだよ!」
「黄瀬、前と少し変わったな。」
「そーっスか?」
「目が・・・変なのだよ。」
「変っ!?」
えーウソ、どう変スか?花子っち見てくださいよーなんてそこら辺の女子よりも女子のようだ。
「どうも勘違いだったようだ。やはり変わってなどいない。戻っただけだ。三連覇する前にな。」
真ちゃんのその一言でまたその場の空気が変わったのが分かった。
そして本日2度目の沈黙を破ったのは、やはり黒子くんだった。
「けどあの頃はまだみんなそうだったじゃないですか」
「オマエらがどう変わろうが勝手だ。ただオレは楽しい楽しくないでバスケはしていないのだよ」