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緑間のバスケ【黒子のバスケ】

第43章 ヘマすんなよ






『さっきはほんとに助かったよ。』



気の抜けたようにふにゃっと笑う花子と共に体育館へ向かう。こうやって肩を並べて歩くのはとても久しぶりで、思わず口角があがってしまいそうになるのを必死に隠す。


合宿以来花子とは顔を合わせていなかったし、もう少し恐がられるかと思っていたが、意に反して彼女は普通すぎるくらいに普通だった。




「今後は買出しでも真太郎を連れてくることだな。」


『以後気をつけます・・・・・ねぇ、赤司。ひとつだけいいかな?』


「なんだ?」



余程言い難いことなのだろう。
大きい瞳の黒い部分がキョロキョロと落ち着きなく動き回る。



『あんまり・・、その・・・殺すっ・・・とか、・・言わない方が、』


「・・・。」


『そ、それにっ!さっきの人たちは、引き下がってくれたけれど、あのままケンカになっちゃってたらどうしようってすごい心配した。』


「何故だ?」


『なぜって・・・、』



純粋にそう思った。
僕たちは敵同士であり、強引に花子のことを自分のモノにしようとしている立場。普通に考えたら、そんな僕のことは憎くてたまらないはずだろう。


それなのに心配をする理由が、僕には全くもって検討がつかないのだ。




『そんなの、赤司が大切だからに決まってるじゃん。』



一瞬、ほんの一瞬。
心の奥底に閉じ込めた弱いオレが、息を吸い声をあげた気がした。



「そう・・か。」



その“大切”の大きさは真太郎と同じか?
なんて情けないことを聞いてしまう前に下唇を思いきり噛み締め、深く深く沈むようにオレを落とし込んだ。


もちろんその大きさが同じじゃないことくらい聞かなくたって分かっている。


でも今、隣にいる花子がそれはそれは優しく微笑むから、こんな馬鹿げたことを聞いてしまいたくなってしまうし、もしかして本当は僕のことが好きなんじゃないかと、錯覚までしてしまう始末だ。



「・・・逆だったら良かったのにな。」


『ん?なんか言った?』



ふと漏れてしまった言葉たちは、行く宛てもなく宙に舞った。


そして未だに出会う順番が真太郎よりも僕のが早かったら・・・なんて考えてしまう自分を心の中で嘲笑った。


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