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緑間のバスケ【黒子のバスケ】

第39章 ・・・殺す






「・・・えっと、」


『多分、これが理由なんだと思う。鉄平さんが殴りたいって言ってた。』



自販機から出てきたおしるこを取り上げる山田に、なんて声をかければいいのか分からなくなったオレは静かに口を噤んだ。


そんなオレの顔を見た山田は一瞬眉をひそめてからぎこちなく笑った。



『・・・汚いんだよね、あたし。』


「は?」


『真ちゃんはそんなこと絶対言わないし、こんなこと言ったら怒られるだろうけど、・・それでも時々思うんだよね。自分がとってもきたな』



“汚いんじゃないかって、”
そう言おうとしていることに気付いたオレは思わず山田を抱き寄せた。



「それ以上喋ったら、キスしてオマエのそのうるさい口、塞ぐぞ?」



一瞬、本当に一瞬。
キスをして口を塞いでしまおうかと思った。


それでもオレの好きな山田は、オレの大切な相棒の彼女であって、既いのところで理性が働きそんな大それたことはやはり出来なかった。



「・・嫌じゃねぇの?」



出会った頃、肩に手を乗せただけであからさまに嫌な反応を見せた時とははまるで別人のように、腕の中でじっとしている山田。


激しく暴れて抵抗のひとつでもされるかと思っていただけに、正直拍子抜けした。男とは違うその華奢な身体は、力を入れたら折れてしまいそうで、できるだけ優しく抱きとめた。



『嫌じゃない。でも・・・、』


「でも?」



“離れた方がいいと思う”
小さな声でぼそっと言ったかと思えば、次の瞬間には後頭部に激しい痛みが走った。



「人のオンナに手を出すとはいい度胸なのだよ。」


「いってぇな、」



足元に転がるバスケットボールを見て、後頭部の痛みの原因は直ぐに分かった。


「おしるこ買うのにどれだけ時間がかかるんだ、待ちくたびれたじゃないか。」


あからさまに苛立つ真ちゃんの手におしるこが渡り、ロッカールームへと戻る。その道中、真ちゃんの目を盗んで山田の耳元に口を寄せながら頭を撫でた。



(「オマエはいつだってキレイだよ」)

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