第35章 幼なじみをやめたいんだ
「クラスにちょっと気になる子ができた」
「・・・誰なの?」
・・・この私より可愛いの?そんな子いないでしょ?
心の中が悟られぬようめいいっぱいの演技をする。
「先輩も良く知ってる、山田。」
・・・あんな子のどこがいいの?
思わず口から飛び出そうになった瞬間、公園のライトで照らされた灰崎の顔がやけに優しそうに見えてその言葉たちは喉の奥でつかえる。
そしてみるみるうちに湧き出てきたのは、山田に対する敗北感と嫉妬だった。
・・・次は灰崎よりももっとモテてもっとかっこいい人を彼氏にしてやる。
そのあと別れることに合意した私は、夜の街をひたすらに走った。走って走って走りまくった。
どんなルートをどれだけ走ったのか、今じゃ思い出せないほどに一心不乱となって走り続けた。そうすることで慕ってくれている山田に対する黒い感情を消しさろうとしたのだ。
まだこのときは山田への情が首の皮一枚で繋がっていた。
しかしバカみたいに走り続けた結果があの練習試合だった。
好きなオトコも好きなバスケも全部山田に取られた気がして、全部山田に負けた気がして、私はどんどんと嫌なオンナに成り下がったのだ。
澄んだ目をしてる山田に苛立ち、初めは自分でTシャツを隠した。そのうち山田のずば抜けたバスケセンスに嫉妬するもの、赤司や緑間と仲良くしていることに良く思わないもの、山田の敵はバスケ部の内外に多く存在した。
そして最終的には私の指示の元、主に1年生たちが嫌がらせに加担して行ったのだ。
そして冒頭に戻る。
「山田が悪いっ、全部全部山田さえいなければこんなことにはならなかったっ!」
「・・・・・。」
「学校に来れなくなればいい。今だって真底そう思ってるわ。」
2人は怖い顔をしている割に、こんな狂った私を前にしても怒鳴り散らしたりしなかった。ただ静かにそして確実に怒っていた。