第35章 幼なじみをやめたいんだ
「山田が悪いっ」
自分の大きな声が響く。
何も初めから山田が嫌いだったわけじゃない。
1年生の中でダントツバスケが上手くて、すごく可愛いわけでもないのに、みんなから好かれている山田を私も好いているうちの一人だった。
何かある度に先輩先輩と後ろを歩かれるのは正直鬱陶しいなと思うこともあったが、初めてできた後輩ということもあってかそれほど嫌ではなかった。
あの日までは・・・・・
照栄中との練習試合の前夜、私は彼氏と公園でバスケをしていた。
「わざわざ呼び出して何事?話あるなら学校に来たら?灰崎、学校休み過ぎじゃない?」
「・・・あのさ、」
灰崎の言いたいことは、手に取るようにわかった。会った瞬間から目を合わせないあたり、別れ話だろう。
「別れねぇか?」
「どうして?」
「・・・。」
・・・そっちから告白してきたくせに。
少し困った表情を彼に見せつけながら、心の中ではそんなことを思っていた。
本気で彼を好きだったかと問われれば、限りなくNOに近い。ちょっと見た目の良い彼氏が欲しいなと思っていた矢先、タイミング良く告白してきたのが灰崎だった。
モデルの黄瀬や赤司に次いでなぜかモテている灰崎なら、私の彼氏に申し分なかった。とどのつまり私にとって彼氏とはアクセサリーと同様なのだ。
それでも限りなくNOに近いと答えたのには理由がある。
実際に付き合ってみると灰崎は今まで付き合ってきた誰よりも優しくて、誰よりも私を知ってくれた。そんな世間のカップルじゃ当たり前のことが私はとても嬉しく、彼を本当に好きになりかけていた。
そして私は気付く。
アクセサリーだと思って付き合ってきたオトコたちにとってもまた、私はアクセサリーなのだと。