第34章 ごめん、許してくれ
『赤司、』
「またTシャツか。持っていきな。」
『ありがとう。』
あっという間に夏休みが終わり、夏も終わり、新チームになってからの試合もこなし、季節はすっかり冬になった。
画びょうの件があってから夏休み中の嫌がらせはなかったが、2学期が始まるとまたTシャツを隠される嫌がらせは不定期に行われていた。
隠されるものはTシャツだけに留まらず、上履き、ロッカーに入れて置いた教科書など、日に日に嫌がらせは酷くなっていった。
“そろそろ先生に相談したら?”
見かねたさつきに心配され、先生に相談してみたものの誰がそんなことをしているのか分からないままだった。
全中の決勝戦こそ心が折れかけたが、慣れも出てきたのか今ではそこまで気にならなくなっていたし、バスケに没頭する毎日で気にする暇もなかった。
「おい、花子。ちょっと待て。」
『ん?』
赤司からTシャツを受け取り体育館へ向かおうとすると腕を掴まれる。
「声が変じゃないか?風邪でも引いてるのか?」
『よく分かったね。ちょっと喉痛くて。』
真ちゃんにも気付かれなかったのによく分かったね、と感心する私を横目に赤司は大きめのため息を吐いた。
「あまり無理するなよ?」
『ありがとう。また帰りね。』
心配そうに見つめる赤司に背を向け体育館に戻り、ロッカーの扉を開けるといつもそこにあるはずのバッシュが無くなっていた。
バッシュが無くなるのは初めてのことで正直戸惑っていた。
教室に置いてある体育館履きで練習しようかとも考えたが、あのバッシュは“赤司が選んでくれた真ちゃんとお揃いのバッシュ”であり私にとっては特別なバッシュ。
練習よりもバッシュのが大切だと思い、監督に声をかけてから私はバッシュを探しを始めた。