第21章 色気の欠片もないのだよ
『遅いよ、ばかっ!』
花子の口調は怒っていた。
『この間のキスもよく分からないし、なんか真ちゃんといるとドキドキするし、ずっと幼なじみだと思ってた人にこんな気持ち抱いていいのかなとか不安になるし、なんかもう、ここ最近真ちゃんのせいで』
「少し、黙れよ」
ちょっと強引にでもできるだけ優しく頭を引き寄せ、ごちゃごちゃとうるさい花子の唇を塞ぐように触れるだけのキスをした。
びっくりしたのか花子は目を丸くして、放心状態。消毒ってキスしたときと同じ顔だ。
「・・ったく色気の欠片もないのだよ」
『真ちゃんが・・・急に、するから・・じゃん』
ぷくっと頬を膨らませる。
その姿さえも意地らしくて可愛いだなんて、オレも大概だな。
てか、こっちだってオマエの行動にいちいち振り回されてんだよ。その度に葛藤して、我慢して・・・いや我慢出来なかったときもあったけど、ここ最近とかそんなレベルじゃねぇぞ、オレは。昔っからだぞ。
なんてやっぱり言えない。
そもそもこの告白だって緊張して想像してた告白よりだいぶかっこ悪い感じになってしまった。
『・・・真ちゃん』
「どうしたのだよ?」
『わたしもっ・・・好きだよ?』
そのあとのことは正直覚えていない。
ただ、お互いの欲望のまま何度も何度も口付けを交わした。
『んっ・・・っ・・・、』
触れるだけのキスから、舌を絡めて呼吸が苦しくなるキスまで、花子の口内を犯し続けた。
『しん・・・ちゃん、』
「んっ。花子っ、」
名前も何度も呼びあって、月と海が見ている横でオレたちはバカみたいにお互いを求めあったのだ。
合宿2日目、こうしてオレたちは晴れてただの幼なじみを卒業した。
(「あいつらキスし過ぎじゃね?」)
(「あまり見るな、宮地。」)
(「くそー緑間。うらやましいなー殺す。」)
(「おい、宮地、オマエが仕向けたんだろ?」)
(「だけどよ、大坪。あんなの見たらさ、」)
(「だから、見るなって。」)
(「宮地の宮地が、」)
(「分かった、もう黙れ宮地。」)