第16章 おとぎのくにの 8
孤児院のある教会は街の中心部にあるらしい。
だから当然馬車は街中を走ることになる。
見るとはなしに窓の外を眺めていると、馬車が進むにつれ民家より店舗の数が増えていって。
その中にお菓子屋らしき店を見つけ、侍女長とのやり取りを思い出した。
孤児院に行くと決めたものの、慰問とは具体的に何をしたらいいのか分からなかった私たち。
森の中で出会った時と同じように、ただ子どもたちと遊ぶだけでいいのかもしれない。
たぶん誰もお義姉さまと同じ働きを私に求めたりはしないだろうから。
でも本当にそれでいいのか不安に思って。
少し迷ったけど、思い切ってこちらの屋敷の侍女長に相談しに行った。
今まで避けていた自覚があるから気まずさもあったけれど、変わりたいのならいつまでも身近な使用人たちを避けて通るわけにはいかない。
侍女長は一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐに表情を戻すと真剣に話を聞いてくれた。
私の不安を打ち明けると、侍女長はお義姉さまが孤児院でされていたことを具体的に教えてくれて。
そのうえで、私はあまり難しく考えず子どもたちと一緒に楽しむことが一番良いのではないかと言ってくれた。
お義姉さまとは立場も年齢もちがうのだから、子どもたちと年の近い私ならではの接し方があるはずだと。
確かにお義姉さまの真似をしようと無理をしても、きっと不自然でかえって子どもたちを不安にさせてしまうかもしれない。
はっきり言葉にしてもらえたことで、少し肩の力が抜けた。