第20章 卒業式
熱い頬を両手で押さえる。
いつの間にか冷えきってた手の冷たさが今は心地いい。
翔ちゃんがいつ俺のことを好きになってくれたのかちょっと気になったけど、自分から聞くのは恥ずかしいし。
とにかく今は翔ちゃんの話を最後まで聞こうと黙って耳を傾けることにする。
「入学直後からカズと智くんはすごく注目されてて…2人のこと狙ってるやつもいっぱい居たんだよ?」
気づいてた?って聞かれて、ふるふると首を横に振る。
自覚があったかと聞かれれば、答えはNOだ。
男なのに男子校で誰かに狙われるなんて普通考えないでしょ。
でも、雅紀にそんなようなことを言われたことはあった。
全然本気にしてなかったけど、その後すぐにあの丸山くんの事件が起きたんだっけ…
「その中でも特に、丸山はカズのこと本気で狙ってるって噂を聞いて気にしてたんだ…」
え?そんな噂があったの?
それは知らなかった…
俺の耳にも入ってれば、1人でのこのこ出向かなかったのにな……って、今さら思ったってどうしようもないんだけど。
「そしたらあの日、ゴミ捨てに向かう途中で裏庭に向かう丸山を見掛けて。その後にカズも裏庭に向かうのを見つけて…そこまでは、本当に偶然だったんだよ」
「そこまでは…」
気になって思わず呟いちゃったら、翔ちゃんの肩がびくっと揺れた。
「あ、遮ってごめんね」
翔ちゃんは不安そうな顔をしてたけど、どうぞ続けてって先を促したら躊躇いながらもまた口を開いた。
「……裏庭って告白スポットでしょ?そこに噂の丸山とカズが向かってて。そんなの見ちゃったら居ても立ってもいられなくなって…」
そこで一度口を閉じると大きく息を吐いて
「こっそりカズの後をつけたんだ」
観念したようにそう白状した。