第20章 卒業式
それでも翔ちゃんはしばらく悩んでるみたいだったけど。
「あの日さ…」
やがてぽつりぽつりと話し始めた。
翔ちゃんがこんだけ躊躇う内容だ。
俺も覚悟して聞かなきゃとお腹に力を入れる。
「俺がカズを助けられたのは、偶然だけど偶然じゃなかったんだ…」
でも最初からまるで謎かけみたいで首を傾げてしまった。
偶然だけど偶然じゃない?
どういうこと?
「日直だったのも、それで先生にゴミ捨てを頼まれたのも偶然だよ…でもゴミ置き場から裏庭に行ったのは偶然じゃないんだ…」
あの時、確か翔ちゃんはゴミを捨ててたら声が聞こえたから気になって様子を見に行ったって言ってた。
それがウソだったってこと?
じゃあ、どうして翔ちゃんは裏庭にいたの?
そもそもなんでそんなウソをつく必要があったんだろ?
疑問がぐるぐる頭の中をめぐるけど、いくら考えても答えは出ないから。
話の続きを黙って待っていたら
「俺さ、あの頃にはもうカズのことが好きで…」
「えっ!?」
突然の告白にびっくりして思わず大きな声が出た。
だって俺も言ってなかったけど、翔ちゃんからもいつから俺のこと好きかとか聞いたことなかったから…
何となく仲良くなってから少しずつ好きになってくれたのかなって思ってたけど。
ちがうの?
あの頃って5月だよ?
挨拶くらいはしてたかもだけど、翔ちゃんとまともに話したことなんてなかったよね?
顔を知ってる程度の単なるクラスメイトだったのに。
もう俺のこと好きだったって…
カーッと顔が赤くなるのが自分でもわかった。