【B-PROJECT】(完結)あなたの瞳に永遠を誓います
第59章 それは突然に
「ねぇ、こっち向いて」
甘えるみたいな声色に、身体ごとそちらを向いた。
「さっきのことは、忘れてくださいね!」
目の下まで布団を被ったままで言う。
こちらを見つめる笑顔は、面白がってるけど......。
「どうしようかな?」
「そこは、嘘でも『分かった』って言ってください......」
「ふふっ、分かったよ」
優しく微笑まれると、唇に柔らかいものが触れた。
外は相変わらずの雨のようだ。
聞こえる音から、その雨足の速さが感じられる。
「雨音、すごいね」
「そうですね。雨......好きなんです」
向かい合わせで抱きしめられると、その首元に擦り寄った。
「どうして好きなの?」
「うーん......何か雨音で雑音とか掻き消されるし、それこそ世界中に私達しかいない気がしませんか?汚いものとか全部を洗い流して、心が静かになるみたい......雨が上がったら、自分も生まれ変わるみたいな気持ちになれるんです」
「ふふっ、剛士の言ってたことがよく分かる気がするよ」
「えっ?」
見上げた彼は愉快そう。
剛士くんは何を言ってたのかな?
「みょうじさんの感性はすごいって言ってたから」
「そうなんですか?」
そんなこと言ってたんだ。
「すごいというか......どこかおかしいのかも。季節の変わり目とかに香りを感じるんですよね。春のある日に、夏の香りを感じたりとか」
「いい意味で変わってるのかな?だから、一緒にいると楽しいよ。同じ物事でも『そういう考え方や、捉え方があるんだ』って感心する。香り、また教えてね」
「ふふっ、褒め上手ですね。ありがとうございます」
口元が緩むとギュッと抱き寄せられた。
彼の腕の中は安心する。
ずっと、こうしてたい......。
「結婚のことって、元々話してくれてたんですね?」
その言葉にきょとんとする彼。
「夜叉丸さんから聞いたの?」
「はい」
「本当は結婚する時まで、みょうじさんには内緒にしておきたかったんだけど......格好悪いな」
「そんなことないです!すごく素敵でとても嬉しかった。ありがとうございます」
首元に腕を回して思いっきり抱きしめると、想いが溢れる。
その頬を包み込んで、唇に触れるだけのキスをした。