第9章 All Together

「カズ！待って、止まって！！」

「なんで、来るんだよ！！」

しばらく全力で走って行くとーー踏みつけたコケに足を取られた。

「きゃっ！？」

当然身体が傾くーー。

ぽすんっと受け止められて、増長さんの腕の中にいた。

「ごめんね......」

申し訳なさそうな彼の声にそちらを見つめると、なんだか泣きそうな顔をしている。

「ありがとうございます」

首を振ってお礼を言ったと同時に、追いついた北門さんが私達の前に立った。

「そうやって......お前はいつでも軽々と俺の前に立って、誰よりも輝く......」

今まで北門さんを強く突き放していた彼の声色は、驚くほど弱々しい。その表情もひどく悲しいものだった。

「倫毘沙と居ると、俺は母さんに見つけてもらえないんだ......」

えっ......どういう事？
増長さんの言葉に勿論戸惑う。

「トップアイドルになれば、何処かに居る母さんの目に留まるだろうって......ずっと努力してきた」

増長さんは......何でもそつなくこなして、リーダーと慕われてて、真面目で努力家。

でもそれは......全てお母さんに見つけてもらう為だったんだ。


あの日ーーマンションまで送ってもらった日に私に言ってくれた言葉。

『大切に育てられた感じがする』

一体どんな思いで、彼は......。