第74章 必要な犠牲

「私、山城さんと......増長さんにこういうことしてもらう資格ない......」

もう遅い。
心から触れられたいのは彼だけだったのに。


「どこに触られたの？」

両手を握られると額、頬、鼻、余す所なく口付けが降ってくる。


「だめっ、ますながさん......ふっ」

そのまま唇にチュッと触れるだけのキスをくると、それはどんどん深くなっていった。


どうして？

「んっ......だめ......」

「はぁ......好きだよ......」

「ふぁっ......んっ」


気持ち良くて何も考えられない。
そのまま唇が首筋に這っていく。

「んっ......」

「付けていいのは俺だけなのに......」


それは胸元に、お腹、背中、太もも......唇は全身に触れて、そのまま痛みを残していった。


「これで全部」

心臓は壊れるくらいうるさくて身体も燃えるみたいに熱い。


「ここも触っていい？」

布団越しに胸に手が優しく触れた。

心臓の音、気付かれちゃうかもしれない。

でも......。


「はい......」

おずおずと答えると彼はきょとんとした顔をしている。


「どうかしましたか？」

「嫌がられたら、どうしようかと思った......」

「あの日は増長さんの気持ちが分からないままするのが嫌だったんです。一番は自分を大切にしてほしくて......」

うまく伝わってなかったのかな？


「『好き』って言えばみょうじさんの全てを入れられた？でも前の俺のおかげじゃ意味がない。だから言えなかった。なのに自制が効かなくてあんなこと......ごめん。でもみょうじさんには今の俺を好きになってほしいんだ」

同じだよね。


私も『婚約者だったから』じゃない。
もう一度私を見て好きになってほしかった。


「きっと......ずっと好きだったんだ」

「えっ、いつ......んっ！」

胸が露わになると優しく触れられる。
全身が心臓になったみたいに鼓動がうるさい。


「お喋りは後でしよう。俺も余裕ないから......」

そのまま胸に舌が触れると生温かい感覚にゾクゾクする。