第9章 現世編(後編)
確かに見た目こそまだ高校生に見えるかもしれないが実際それより何倍の時を過ごし、中学以上の学校に通っても居ないゆうりはしれっとした顔で誤魔化した。
家は転んだ場所からかなり近かった様で、あっという間に彼らの家に到着する。一戸建ての家は病院にもなっているのか、看板が掛かっておりそこには"クロサキ医院"と書かれている。
「迷惑掛けたし、上がってってくれよ。茶位出すぜ。」
「ううん、私も帰って夕飯作らないといけないから。」
「ゆうりちゃんも家事当番なの?」
「えぇ、遊子ちゃんと同じだよ。」
「そっかぁ…!」
「遊子ーー!!!遅かったなぁ!!心配したんだぞ!!どうした!?道で変な男にでも絡まれたか!?それとも何か落とし物でもした……の……」
同じ境遇を持つ者が居たのが嬉しかったのか、遊子は目を輝かせ照れ臭そうに笑った。そんな時、突如扉が開いたらかと思えば1人の男が涙を流しながら顔を出した。一護は男の情けない顔を見て肩を落とし、一護に背負われた遊子は苦々しく表情を歪める。そして男の顔を見たゆうりは目を見開き、ゆうりと目が合った男は涙の代わりに大量の汗を流す。
「い、一心さん!?」
「ゆうりちゃん!?なんでこんな所に居るんだ!?」
「それはこっちの台詞ですよ!!まさか子供が居るなんて!しかも高校生!?」
「なんだ、親父と知り合いだったのか?」
「お父さん凄い汗。」
状況を飲み込めない遊子と一護はただキョトンと目を丸める。
黒崎…確かに聞いたことある苗字だとは思っていたがまさかこの男、あのクインシーの少女と結婚をしていたとは。
予想だにしなかった再会に誰より慌てたのは一心だった。己が死神という事も、母親がクインシーだということも、子供達は知らない。そしてわざわざ知らせるつもりもない。彼はすぐ様ゆうりの肩に手を回し家では無く診察室へと招く。
「いやぁ偶然だな!お父さん、ゆうりちゃんと話す事が山程あるから午後は休診だ!良いか、診察室には一歩も入って来るなよ!」
「…おい、まさか高校生に手ェ出してたりしねーよな親父…。」
「大丈夫だよ、一心さんとは古くからの友人なの。ちょっとお父さん借りるわね。」
「古くからって、だからアンタ幾つだよ…!」