第7章 死神編【後編】
…掟はもう、二度と破らぬと決めたのだ。流魂街出身の彼女に友人以上の感情を抱いてはならない。ルキアを引き取ったその日から、私情に流されぬよう彼女に対する余計な感情には蓋をした。…開くようなことがあってはならぬ。
「…友として、私はゆうりの身を案じているだけだ。」
己へ言い聞かせようと口に出した。刹那、大きな音を立てて部屋の扉が開かれる。まさか他に訪問者が居るとは思ってもいなかった白哉の目が見開く。
「やっほーゆうり!風邪大丈夫〜…あれ、朽木隊長も来てたんですかぁ?」
「乱菊さん、流石に病人の部屋にそんな大声で入るのはちょっと…。」
「…何故他隊の者がここに居るのだ。」
「えー?だってゆうりが市丸隊長に四番隊へ運ばれてたって噂でもちきりですよ?ね、修兵。」
「えぇ、まぁ…俺も噂聞いて見舞い来たら丁度乱菊さんにばったり。」
「まさか朽木隊長が1番にここへ来てるとは思いませんでしたけど〜?」
揶揄う様に、にやにやと笑いながら視線を送る松本に白哉は息を吐き出し席を立った。それにしてもまさか彼女の事がいちいち噂になっているとは。
「ゆうりって先輩後輩関わらず凄い人気なんですよ。気丈で美人だし、強いって。ファンクラブも有るみたいですよぅ。本人は全く知らないでしょうけど。」
「私にとってゆうりはただの部下でありそれ以上でも以下でも無い。要らぬ情報だ。」
「あれ、そうなんですか〜?」
全く、ゆうりの周りはどうしてこうも不器用な男が多いのかしら。
内心悪態をつきながらも松本は騒いでも起きる様子を見せない彼女の元へ近寄り買ってきた酒瓶を近くのテーブルへドンと置いた。白いラベルに筆で文字を書き、檜佐木は隣に買ってきた果物を添える。
「顔色は悪くなさそうだな…早く治せよ。」
「そこでキスの1つでもしたらどうなのよ。」
「しっ、しませんよ!」
「つまんなーい。それじゃ朽木隊長、あたし達戻りますね〜!」
顔を真っ赤に染めて首を思い切り横に振る檜佐木を連れて松本達は出ていった。まるで台風のような彼女らに白哉は呆れ混じり吐息を1つ落とし、後から病室を出る。
それからというもの、ゆうりが眠る部屋に人がひっきりなしに来てはお見舞いの品がどんどん積まれていく事など白哉も彼女自身も知る由もなかった。
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