第62章 旅立ちの日〜最終章〜
「信長様、紗菜は?」
「紗菜は寝たゆえ侍女に任せてきた」
紗菜は、信長様との間にできた二番目の赤ちゃんで、一歳の女の子。
「ありがとうございます。あんなにグズってたのに、信長様に抱っこしてもらうと、すぐ寝るんですよね。ほんと不思議」
「ふっ、女の扱いは貴様より心得ておるからな。」
ふんっと、したり顔の信長様。
でも、本当にそんな気がしてならない。
私よりも、信長様に抱っこをしてもらう時の紗菜の顔がとても嬉しそうで....
「じゃあ次の子も、女の子だったら信長様にお願いしますね」
「.........................は?」
そうだよね、そうなるよね。
「だから.......その、.....」
「貴様......また身ごもったのか?」
目を見開いて声を張り、信長様は私を見た。
「..............はい」
「紗菜が産まれてまだ一年しか経っておらんぞ」
「そんな事言われても......毎晩信長様が」
私を抱くから..........自然な流れだと思うのだけど......
「悪阻はあるのか?」
「えっと、」
あるって、答えちゃおうかなぁ
「あり....」
「全然無さそうだな。貴様の顔色で分かる」
ニヤリと口の端を上げて、私の頬を撫でた。
「なっ、今あるって言おうと....きゃあっ!」
ふわりと体を抱き上げられ、ちゅっと唇にキスされた。
「...............っ」
「貴様は俺に抱かれるためにある。悪阻は一生こぬ」
ここまで気持ち良く言い切られると、本当に来ない気がして来た。現に、一人目も二人目の時も、悪阻らしい悪阻は来なかった。(眠かったけど、それはいつもの事だと皆から言われた)
「.......もう、ほんと俺様」
観念した私は信長様の首に腕を巻きつける。