君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第24章 tempestoso…
全ての業務を終わらせて、アパートに帰った俺は、シャワーを浴びることすら億劫になる程疲れきっていて…
油と汗に塗れたシャツを脱ぐと、そのままベッドに横になった。
雅紀さんが見たら、「ちゃんとシャツ着て寝ろ」って怒られるところだけど、有難いことに雅紀さんも潤さんもここにはいない。
俺は二重にした毛布と布団に包まると、急激に重たくなった瞼を閉じた。
なのにどうしてだろう…、眠れない。
身体はヘトヘトに疲れてるし、瞼だって重いのに、どうしてだか全然眠れなくて…
そんな時に考えるのは、いつだってあの人のこと。
忙しく動いてる時には、全くって言って良い程忘れてるのに、気を抜くとすぐにあの人のことを考えてしまう。
あの人の、
ちょっと困ったような笑顔…
ちょっとハスキーがかった、でも男らしい声…
ちょっと頼りない肩…
俺を強く抱き締めてくれる、強い腕…
もう三年も経つのに…
三年も経ったのに、今でも鮮明に覚えている。
「会いたい…」
会いたいよ、翔さん…
あなたに会いたい…
それからの数日間、俺はゆっくり飯を食う間もないくらいに忙しくて…
店とアパートを往復するだけの日が続いた。
正直、睡眠はろくに取れないし、身体は限界を訴えて悲鳴を上げてた。
それでも仕事をしている間だけは、翔さんのことを考えずに済んだから、俺はあえて忙しく動き回った。
翔さんのことを考えたら…
翔さんのことを考えるだけで、胸が苦しくなって…、泣いてしまいそうだったから…
そんなある日…
オープンニングイベントも終わって、店も落ち着き始めた頃、大口の団体予約が入った。
地元の会社の親睦会とかなんとかで…
丁度オープン以来、初めての俺の休みの日でもあったから、本当は断ろうとも思った。
でも不思議なんだよな…
どうしてだか断ることが出来なかった。
その結果、まさか…なことが起きるなんて、全く想像もせずに…