第23章 17歳
「それ… 派手すぎないかな…?」
ペトラが手にした白銀色のビーズをふんだんに使用したヘアコームは、実はマヤはまだ一度も使用したことがなかった。
そのビーズはまるで湖でとれる真珠のように煌びやかな輝きを放っていた。大粒の白銀色の珠が七つ、横一列にならんでいる。その周囲を取りかこむように小粒の珠がウェーブを描いて配置されていた。
店頭で見かけてから “綺麗だな” と思いずっと気にかけていたところを、セールで値が下がったので思わず衝動買いしてしまったのだ。
だが店のショーケースに飾られているのを眺めていたときと、いざ自分の所有物になって自室で見たときでは印象が全く違っていて。
……私には派手すぎる…。
そう思って、たんすならぬ “引き出しの肥やし” になってしまっていた。
「派手すぎる? ないない、そんなこと全然ないよ!」
確かにマヤが普段愛用している髪留めや小物のイメージよりは、この大粒小粒の白銀色のビーズが放つ輝きは豪華絢爛だ。
しかしペトラは、だからこそマヤの濃い茶色の髪の上で特別な輝きを見せる気がした。
「マヤは服だってバッグだっておとなしめな感じなんだし、髪飾りくらいはこのくらい存在感がある方がアクセントになっていいと思うよ?」
「……そうかな?」
「……そうだって!」
ペトラの言葉を聞いていると、そうかなという気持ちになってくるから不思議だ。
「じゃあ、つけてみて」
「OK!」
軽快に返事をしてペトラは、結び目にヘアコームをきゅっと挿した。
「ほら、いい感じ~! 綺麗だよ!」
その声につられて鏡の中の自分を見つめる。顔を横に向けても真後ろはよく見えない。
「こっち!」
ペトラがマヤを立たせて、壁にかけてある姿見の前に連れていく。そして卓上ミラーで合わせ鏡にしてくれた。
「ほんとだ…、綺麗…」
ペトラが編みこんでくれたハーフアップの結び目に輝く、白銀色に光るビーズのヘアコーム。
店頭で見かけて憧れた輝きそのものが、そこにあった。
「ありがとう、ペトラ!」