第23章 17歳
マヤの必死な無言での訴えかけにもリヴァイは、涼しい顔で紅茶を飲んでいる。
「……どうした? リヴァイの顔ばかり見て」
不審そうなミケの声色にマヤは慌てる。
「いえ! 別に…!」
「ならいいが、てっきりリヴァイと約束でもあるのかと思った」
「そんな!」
頬を赤く染めて口をぱくぱくして困っているマヤを眺めながら、ミケは “当たりか” と思っていた。
以前にマヤと街へ行く約束をしたときに、食堂でペトラに予定を訊かれたマヤが、困った様子で自身の顔色をうかがってきたことを思い出す。
……あのときは俺が口止めしたからな…。
そうか、リヴァイもマヤに口止めしたか…。
「フッ…」
そう思うと、自然と鼻を鳴らしてしまう。
途端に低い声が飛んできた。
「明日俺たちは、ヘルネに行く」
……そんな宣言しなくたって、俺はお前たちが二人でどこかへ行くってわかってたがな。
そんな心の声を目の前にいるリヴァイに届ける訳にもいかず、ミケは曖昧な感じで相槌を打った。
「へぇ…」
マヤの方を見れば、驚いた表情でリヴァイを凝視していた。
「兵長、大丈夫でしたか…?」
「何がだ」
「その… 明日のこと… 言っちゃっても…」
「あぁ、別にやましいことは何もねぇ」
「それはそうですけど…」
ミケは二人の会話に割って入った。
「やましいかどうかは第三者の俺が判断しよう。明日はなぜ街へ?」
ミケをじろりと一瞥しながらも、リヴァイは律儀に答えた。
「お前もよく知る理由だ」
「………?」
どや顔でよく知る理由だと言われても、なんのことだか一向に理解できそうにない。
ぽかんとした様子のミケを見て、リヴァイは明らかに苛立ちを隠せずに吐き捨てるように言い放った。
「……マヤが俺の執務を手伝うようになっただろうが。それの礼だ」