第21章 約束
「あっ、すみません! 自分で捨てますから!」
「いや、いい」
「でも…!」
なぜかリヴァイは頑なに空き瓶をマヤに渡すことはしない。不本意ではあるがマヤは諦めるしかなかった。
……兵長がいいって言うなら、仕方がないよね…。
「ごめんなさい…。お願いします…」
「あぁ」
その声がかすかに嬉しそうに響く気がして、マヤは不思議に思った。
あらためてリヴァイが空き瓶を押しこんだ紙製の手提げ袋に注目する。それは比較的小さなもので、濃紺に白いラインが二本入っていた。
「……兵長もお買い物をされたんですか?」
「……石けんと羽根はたきだ」
「羽根はたき… ですか」
「あぁ」
リヴァイは手提げ袋から紙の包みを取り出すと、それをひらいた。現れた小ぶりの羽根はたき。
「小さいですね?」
羽根はたきと聞いてイメージしたものは、もう少し大きい。家具の埃を払うのに使う羽根はたきとは違うのかなと、マヤは疑問に思う。
「これは卓上専用なんだ」
そう言いながら、マヤに渡す。
「うわぁ…。やわらかいですね」
マヤが今までに使用したことのある羽根はたきとは明らかに違う羽根のやわらかさ、しなやかさ。
……上等なんだろうなぁ…。こんな素敵なはたきでお掃除したら楽しそう!
「……気持ちいいです。ずっとさわっていたいくらい」
羽根を撫でながらつぶやくマヤを、リヴァイは優しいまなざしで見ていた。
「よく埃も取りそうですね」
「そうだな」
「兵長はミケ分隊長と違って、綺麗好きですものね」
「……そうだな」
マヤの口からミケの名前が飛び出して、リヴァイの機嫌は本人も気づいてはいないが若干悪くなる。
「分隊長は全然机の上を片づけないし、部屋だって掃除しないんですよ。だから最近は執務以外にお掃除も…」
そこまで話してマヤは、リヴァイに執務のお手伝いを申し出ようと考えていたことを思い出した。