第21章 約束
葡萄水の瓶のスクリューキャップはリヴァイの白い指がきゅっきゅっと、いとも簡単に開けてしまった。
……兵長の指… 長いなぁ…。
その所作があまりにも優雅でマヤは一瞬見惚れてしまう。
「ほら」
ふたを開けたリヴァイが差し出してくれた瓶は、陽を受けてキラリと輝いた。
「ありがとうございます…」
瓶を受け取り、口をつけて飲む。葡萄水を少しずつ喉に流しこめば、爽やかな果汁の香りが鼻に抜ける。
「……はぁっ」
自分が思っていた以上に喉が渇いていたらしく、一気に半分ほど飲んでしまった。
また右隣から白く骨ばった手がすっと伸びてきた。
……あっ、キャップは兵長が持ってる…。
ふたをしてくれるのかと思い、マヤは葡萄水の瓶を手渡した。
瓶を掴んだリヴァイはそのまま黙って口をつけて飲む。
……え?
予想していたものとは違ったリヴァイの行動に、マヤは思わず目を見開く。
なぜかリヴァイが瓶を掴んでから葡萄水を飲むまでの一連の動きが、マヤにはスローモーションのようにゆっくりと見えた気がした。
釘づけになって見つめてしまったものはリヴァイ兵長の喉仏。
白く華奢ですらある長い首。尖ったあごから鎖骨にかけての首のラインはしなやかで美しい。そこに… 形の良い喉仏が突き出ている。
ごくごくと飲むたびに、上下に動く喉仏。
マヤは目が離せなかった。
喉仏が止まったと思った瞬間に聞こえてきた低い声。
「……悪くない」
その声でリヴァイの首すじに見惚れていたことにはっと気づく。
そしてまた目の前に差し出された瓶。まだ四分の一ほど残っている淡い紫色の液体が揺れている。
「………」
喉仏に気を取られていたなんて気恥ずかしくて、決して知られたくないと思う。
何を話せばよいのかもわからなくなって、瓶を受け取り黙ってもう一度飲もうとしたとき。
「………!」
マヤはとんでもないことに気づいた。
……これって、これって… もしかして間接キスなのでは!?