第21章 約束
「………!」
やわらかな生地、口いっぱいに広がるコクのある濃厚なクリーム。かといって甘すぎることはなく。
その素晴らしく美味しいクリームパンの味が、リヴァイ兵長に見られていて恥ずかしいといった気持ちをすべて吹き飛ばした。
……やっぱりいつ食べても、このクリームパンは美味しい~!
隣にいるリヴァイのことなどすっかり忘れて、クリームパンにかぶりつく。はむはむと噛んではくちびるについたクリームを舌でぺろりと舐めた。
……美味しい。幸せ…!
クリームパンのもたらす甘さに最大限の幸せを感じていると。
「美味そうに食うんだな」
「あっ…!」
……そうだった。兵長に見られていたんだ。
途端に羞恥心が舞い戻ってきたが、マヤはこの甘い幸せを伝えようと恥ずかしさに打ち勝ち、リヴァイに笑顔を向けた。
「だって本当に美味しいんですよ、このクリームパン。濃厚なクリームがこれでもかって入っていて。お店には他にも色んな種類のパンがあって、きっとどれも美味しいに違いないんですけど、結局いつもこれを買っちゃうんです」
「そうか」
「はい!」
“そうか” と相槌を打ってくれた瞳の色がやわらかくて。マヤはクリームパンがもたらした幸福感とはまた違ったあたたかで優しい気持ちに包まれた。
クリームパンを頬張ったあとは、クロワッサンだ。“アメリ” のクロワッサンは他の店と違って、中がもちっとしている。表面がサクサクなのはどこも一緒なのだが、中がふわふわの店が多いのにもちっとしている “アメリ” のクロワッサンは食べ応えがあり腹持ちもいい。ひとつ食べれば舌もおなかも大満足のパンである。
マヤが紙袋からつまみ出した大きなクロワッサンを見たリヴァイは、その細い眉をわずかに上げる。
「……でけぇパンだな」
「これも美味しいんですよ。こんなに大きいんだし、半分こにしませんか?」