第17章 壁外調査
下の本部の部屋で、ハンジたちがハナバナシイだの和やかに談笑している少し前。
マヤを横抱きにして階段を上がり、リヴァイは奥の左の部屋に入った。
ぐるりと室内を見渡す。
真っ先に目についたのは小さな鏡台。戸棚には人形が数体飾られている。こぢんまりとしているが清潔感のあふれる部屋だ。
……部屋の主は、この家の娘だったのだろうな。
そう思いながら窓際にある木製のベッドにマヤをそっと寝かせた。胸元のクラバットはそのままにして、薄い掛け布団をかけてやる。
鏡台の前にある、背もたれのない小さな椅子をベッドの脇に引き寄せた。腰をかけて、マヤの顔をじっと見る。
顔色は少し悪いが、ただ眠っているみたいだ。
換気のために開け放されていた窓から入ってきた風が、マヤの前髪を揺らす。のぞいた額にわずかに土がついていた。
………。
拭いてやらねぇとな。
水を汲みに立ち上がる。その前に、ふと観音開きの窓に視線を向ける。
じきに夜を迎える。夜風は体に障るだろう。
閉めようと窓に手をかけると、斜め下の玄関前にいる馬と兵士に気づく。
オリオンとアルテミスだ。少し離れてオルオとペトラ。
……あいつらにも説明しねぇとな。
窓を閉めながらつい、いつもの癖で桟(さん)を見る。
「……ほぅ」
思わず声が出た。
埃が積もっていない。
この部屋が俺に割り当てられると知った宿営準備班のやつらが、必死で掃除している様子が目に浮かぶ。
口角を少し上げながら部屋を出ようとしたとき、ばーんと扉がひらいた。
「リヴァイ!」