第17章 壁外調査
「……あ?」
眉間に皺を寄せたリヴァイに睨まれたタゾロは、自身の言葉足らずを反省し慌ててつけ加えた。
「討伐したあと、マヤだけ姿が見えなくて…。やばいんじゃないかって思ったんですが、馬とともに現れました。なんでもミケさんが削いで奇行種が倒れるときに遠くに弾き飛ばされたらしいんですが、馬が受け止めたそうです」
「……そうか」
リヴァイは昨日、アルテミスの馬房で熟睡していたマヤの無垢な姿、そしてそのかたわらに寄り添っていたアルテミスに “こいつを守ってやってくれ” とささやいたことを思い出していた。
……アルテミスのやつ、約束を守ってくれたんだな。
「……マヤが見当たらなかったときはもしかしてと焦りもしましたが、無事でほっとしました」
タゾロの報告を聞いたオルオが、ペトラを見ながらつぶやいた。
「マヤって馬んとこ、よく行ってるもんな…。ほら昨日だって俺らと買い物に行かずに馬と過ごすって言ってたし…」
即刻ペトラが応じた。
「そうだね。オルオだったら受け止められることなく地面に激突だっただろうね!」
「は? そっくりそのまま返すわ!」
「おいおい、お前ら。いい加減にしないか」
エルドから注意を受け、すみませんと二人は神妙にうなだれた。
びゅうと吹いた夕風が布の切れはしを揺らす。陽も落ちようとしていた。
リヴァイの低い声が凜と響く。
「……俺たちは何ひとつ忘れない」
エルドにグンタ、タゾロ、そしてオルオとペトラがそれぞれに右の拳を心臓に当てる。
「……帰るぞ」
「「「はい!」」」
リヴァイ班とタゾロは、スペリオル村へと馬首を向けた。