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【リヴァイ】比翼の鳥 初恋夢物語【進撃の巨人】

第27章 翔ぶ


「格納庫?」

ものものしい名称に、レイは思わず訊き返した。

「荷馬車を保管している大きな倉庫群です」

「倉庫群…。壁外調査にはそんなに多くの荷馬車を出すのか」

「ええ。壁外調査はもともとは、壁外の土地や巨人の生態を調査して巨人討伐に役立てることが目的ですが、ウォール・マリアが崩壊してからは…」

破られることなんかないと信じられてきた壁が、いともたやすく突如現れた超大型巨人と鎧の巨人によって陥落したことを、あらためて言葉にすることに苦痛を感じたマヤは声を震わせた。

「その目的が変わったんです。ウォール・マリアを奪還するための兵站拠点を設営し、補給物資の備蓄をすることが最優先事項となりました。ただハンジさんは率先して巨人を研究しようと、いつも精力的に活動していますが…」

「ハンジが? ……そうか、初対面のオレに物怖じしねぇし、すげぇ女もいたもんだと思ったが。大体ああいう団長だとか兵士長だとか分隊長だとか役職のある輩は、オレら貴族には媚びへつらうのが普通だ。兵士長といいハンジといいミケといい…、変なやつだらけだな」

厩舎へレイとならんで歩き始めていたマヤは、思わずレイの方に顔を向ける。

「ミケ分隊長も…?」

……まさか分隊長、レイさんの匂いを嗅いだのかしら…?

「あぁ、午前中にここに来たときに団長室に最初にやってきたのはミケだった。ろくに挨拶もせずに目を閉じてずっと鼻を動かしていてな。恐らく何か匂いを嗅いでいたんだと思う」

……やっぱり…。

「なんだ、あれは? 部屋が別に臭かったとは思わねぇんだが…。もしかして… オレ? オレが臭いと思われてんのか?」

今さらながらレイは、自身の匂いがミケにあのような行動を取らせたのではないかと気づいて焦っている。

「いえ、そうじゃないと思います。レイさんは臭くないですし…」

レイは臭いどころか、そこはかとなく漂う薔薇の芳香のような良い香りがするくらいだ。

「分隊長は嗅覚の鋭い人でして…。レイさんが臭いとかではなく、そうですね… なんていうか…、あれは “癖” ですから」

「癖?」

「そう、癖です。だから気にしないでくださいね」

ミケの癖だとレイに教えて、マヤはにっこりと笑った。

敬愛する分隊長の妙な癖を思い出すときはいつだって、自然な笑みがこぼれてくるのだ。


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