第2章 幕開け
野崎の運転する車は真っ白な車体の高級車だ。
要が生前から移動に使用していた車である。
煌に言われるまま運転しやって来たのは歌舞伎町にある、とあるマンションだった。
煌「瑛…僕だ、早く開けろ」
何度か呼び出しして、漸く相手が呼び出しに応じた。
待たされた事により、相当苛立っていたのだろう。相手が口を開く前に、荒い口調で煌は告げる。
瑛「え…は…先輩?あ、すぐ開けまーす」
煌の苛立った様子を声音で感じた瑛と呼ばれた男は、ゆったりとした言葉とは裏腹に慌ててセキュリティロックを解除する。
煌はそのまま先へ進んでいった。無論、後ろから付いて行くのは秘書である野崎。
ずんずんと歩く遠慮の無い歩き方は、野崎の目には彼の父である要とは正反対の様に映った。
煌が玄関扉の前に着くと、待っていたかの様に扉が開いた。
瑛「先輩いらっしゃい」
煌「話がある」
瑛、と呼ばれた男は派手な金色の髪をした所謂イケメンだった。
明るく人懐っこい笑みに加え端正な顔立ち。更にはスラッと細身にも関わらず、しっかり鍛えていそうな体つき。女性は放っておかないだろう、そう野崎は思った。
淡々と述べては端に避ける瑛の脇を抜けリビングへと足早に向かう、そんな煌の後ろを当然の様に瑛が行く。野崎はその後ろから付いて行った。
リビングに着いた途端、ソファーに腰を下ろし足を組む煌。野崎はソファーの脇に立ったままで居た。
煌を見ては、瑛は緩やかに問い掛けた。
瑛「先輩、珈琲でOK?あ、あと、確か野崎さん…だっけ?珈琲で良いです?」
野崎「あ、私はお構い無く」
煌「時間が勿体無い。そんなもの良いから座れ」
野崎が軽く頭を下げた途端、有無を言わさぬ口調で煌が告げる。
煌は焦っている様に見えた。だが実際は違う、という事を野崎も瑛も気付いていた。
楽しくて仕方無いのだ。子供が新しい遊びを思い付いたかの様な、そんな高揚感だった。
テーブルに両腕の肘を付き、組み合わせた手の甲に顎を乗せる。そんな姿勢のまま煌は切り出した。
煌「奴隷を作りたい」
瑛「は?」
煌「普通の奴隷じゃない、性処理用の肉奴隷だ」
瑛「…いや……は?」
瑛の反応は当然のものだった。
突然話が飛躍し過ぎている、しかし構う事無く煌は話を続ける。