第17章 ジョニー・ストーム(F4/MCUクロス)
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ソーはともかくとして俺でも気軽に入れるようなレストランを探すのは至難の業といえた。相場の話ではなく品格の問題だ。だからといって俺に合わせる形でダイナーに入店するのは憚られる。彼のような大物が人でたいそう混雑する小規模の飲食店に留まり続けてしまえば何が起こるかなど長考の余地もないだろう。彼だって頭上より高く掲げられたスマホに囲まれながら食事をして、良い気分はしない筈だ。
(……ソーが良ければ俺が作ってもいいか)
うんうん唸って歩いていると対面から男が近付いてきた事に気付かずにあっさりとぶつかる。もはやすれ違いざまに肩が接触する程度ではない、懐に飛び込むほど思いっきりぶつかった。米州で生きるにあたって自分の身長の低さで気を落とす事も多々あったが、抱き込まれるくらいの身長差だと改めて衝撃を受ける。男への謝罪の声が震えてしまったけれど許してくれるだろうか。
「も、申し訳ない。前方不注意だった」
「いーや大丈夫だ。寧ろ大歓迎♡」
「……えっ」
見上げるとこの場に居る筈の無いスティーブの顔が至近距離にある。思わず息を飲むような悲鳴が喉を過ぎて反射的に身を引いて逃れようとすると男は肩を鷲掴んでそれを阻止し、頬を合わせて唇を鳴らした後にとろけそうな甘い笑顔で俺の額を軽く吸った。
「ひっ」
「昨日の今日でまた会えるとは思わなかった。運命かな」
「……ジョニーか!?」
「わお、さっそく名前で呼んでくれるのか。じゃあ俺もレインって呼ぶよ」
「それは別に構わないが……」
「うーん、そういうところが変な男を惹き付けるんだぜ」
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