第2章 胸はずむ
偏差値70超え、倍率300倍以上のマンモス学校。国立雄英高等学校の入学式当日。新しい学校生活とここからの華やかな人生に心が弾まずにはいられない。今にもスキップしそうになるくらい心が浮き足立っている。
あー、私憧れの雄英生徒になれたんだ~。ヤバイ、超嬉しいんですけど。すっごいイケメンとかいるのかな、恋したりとか!?う~ん、恋がしたい~。
頭の中はすっかりお祭り騒ぎ状態で、一瞬でも気を抜けば顔がにやけそう。危ない危ない。
靴を履き替え教室に向かって歩き出す。天井まで伸びる教室のドアの前に立つと、ちょっと緊張してしまう。
いざ尋常に、出陣ナリ!
心を昔の戦国武将のような気持ちになって入っていく。ガラッ、と勢いよくあけ何事もなかったかのように黒板に張ってある座席表を見る。窓側の真ん中か~、ていうか女の子少な。そんなものなのかな~。
名簿をぱっと見て女の子かなって解るのは私以外に6人。21人しかいないクラスにたった7人しか女の子がいないのはちょっと寂しいかもしれない。
友達できるかな~、って思いながら自分の席に鞄をおいて携帯を取り出す。といっても何にも用事なんかないし。だって話しかけにいくのもなんか緊張するし、自然な流れで話しかける事が出来るといいんだけど、それもできそうにない。
「そこの君!なんて格好だ!制服は着崩してではなく、ちゃんときるものだぞ!」
「....え、私に言ってる?」
ロボットのように動きながら私を注意する眼鏡の彼。いかにも学級委員長!生徒会長!風紀委員!みたいな。
「だって、窮屈じゃん?ネクタイとかさ、スカートもここちょっと長いし。」
「しかし、校則は守るものだ。校則違反はしてはいけない事だぞ!」
「えー。」
「大体、女性がそんな積極的に肌をさらすものでは、」
「じゃ、あの人も校則違反じゃない?」
そうして、私はクリーム色のツンツン頭君を指差して標的をすり替えたのである。