第8章 タイムリミットとクローバー
教えてもらえたのは、まず、昨日の戦闘によって俺の中からリアの記憶だけが抜け落ちている状態に陥っているということ。
それも、本人が言うに自分のせいなのだとか。
それから、最近同じ部屋に住んで同棲していたということ。
「ちょっと待てお嬢さん、軽々しく男と同棲なんかするもんじゃねえぞ!?」
『発案者に言われた…リア死にそう』
「俺か、俺だったかそうかそうか、俺が全部悪いな!」
『リアの中也さんが悪いとか勝手に決めつけないで』
「……はい、すんません」
庇われた…のだろうか。
ふてぶてしい物言いだが、その実本当に大事に思ってくれているらしく、思わず照れさせられる。
いい子じゃねえの、マジで。
『ま、まあでもリアの所に一緒に住んでくれてたってだけだから、まだ中也さんの元々使ってた部屋はそのまま住める状態なの…だから、そっち使ってください』
「え?なんでだよ、同棲してたんならそっち連れ帰っちまえばいいのに」
『い、や…だって抵抗あるでしょ、いきなりプライベート共有しろなんて無理な話で、』
「何か少しずつでも思い出せるかもしれねえだろ」
『え、…っ…と、』
びく、と肩を跳ねさせて、目を見開かせて驚かれる。
どうして驚くんだそこで、他にリアクションあるだろもっと。
『…そんな、無理して思い出さなくていい』
「無理も何も、無理してんのお前じゃん。同棲する程の仲だったんだろ?」
『い、やでも、記憶思い出すためにわざわざそんな…』
「じゃあ、俺お前にすんごい興味あるから下心つきってことで」
『……!?!!?』
ぼふっ、と沸騰したように紅くなる顔。
初だなぁこいつ。
「まあ勝手に手ぇ出したりは本当にこれ以上するつもりねえし、お前に抵抗あるなら無理強いはしたくねえけど」
『だ、出していいよ…!?』
「お前、そういうのは好きな男にしか言っちゃいけね……あ、え?…同棲って、」
ふと、ここでようやく同棲の意味に繋がった。
阿呆は俺だ、大馬鹿だった。
『……、な、なんでもない』
「…………出していいってことなら、またどうしようもなく可愛く思っちまったら出させてもらうかもしれねえけど」
『だ、から…いいって…』
「…リア、お前俺に告白された事ない?」
恋人だったからとかじゃない。
今でさえこの調子の俺が、言っていないはずがないと思ったのだ。
