第8章 タイムリミットとクローバー
「…やっと見つけた…手前俺の財布で飯食うたァいい度胸してやがんな新人が」
「げっ、中也さん…」
今げっ、つったな立原、聞こえてんぞ。
あまりにも状況が理解出来ずに飛び出してきたはいいものの…泣きそうだとか言ってやがったこの新入りは、反省の色さえ見せずに飯を頬張り、美味いなどと口にする。
『あー、人の権力で食べる豪華な食事って最高ね。お腹いっぱいだからちょっとお昼寝してくるわ、立原君後よろしく!』
元気じゃねえか、しかも普通に一人前食ってるし。
味がしねえとか言ってたから心ぱ…気になって興味本位で様子でも見ようと思ったのにこれって。
「あっ、おいリア!?中也さん来てんぞ!!?」
『リア小人さん見えないから分かんなーい!!』
前言撤回、少しくらい痛い目見た方が良さそうだあいつは。
「…ったく、無理して食わなくていいのに…中也さん何とかしてやってくださいよ、あいつマジで食欲不振になってるし本気で嫌な予感するんですけど」
「ああ!?俺があんなクソ生意気な餓鬼をどうするんだよ!!つか食欲不振って、ちゃっかり俺のカードで飯食ってんじゃねえか、元気だろどう見ても!!」
「いや、だってそもそも今日これだけしか注文してなかった上に一食しただけでギブアップって…」
「…は?えっ、そんなに違うのか?ていうかお前ら仲良いんだな」
「………中也さん、本当に分かりませんか?あいつのこと」
「どういうことだ?」
思ったまま返したものの、立原からはそれ以上何も聞かれずおわる。
「…ってお前、それ何だよ?ぬいぐる…は??」
ふと、視界に入った抱き心地の良さそうな、少し大きめのぬいぐるみ。
動物がモチーフというわけでもなさそうだったそれが堂々と椅子に座らされていたのがどうにも気になって掴み上げて見てみたら、俺の仕事着を着せたデフォルト人形がそこに…いや待て、誰得だこれは。
誰の趣味だ、しかもやけに作りがいい。
「あー…それリアのやつです」
「はぁ!!?これ…」
「中也さん二号って呼んでますからあいつ」
「マジで俺じゃねえか、どういうことだよ…」
混乱してきた。
あれか、さては…巷でよくいる変態というやつか。
それかよっぽどの変人か、身長をやけにいじってくるのでそのためにわざわざ仕入れたか。
…有り得る。
「やべえな、早く返しに行かねえと…」
