第8章 タイムリミットとクローバー
中也さんと太宰さんが二人がかりで相手であるラヴクラフトさんに対抗する間に、私は外野が手を出さぬように槍を構えて、植物を操るジョンさんを相手取る。
まあ、言っても体が折れているので大した戦闘もできないのだろうけれど。
こちらもこちらで妖怪の力を使いたくはないため、ありがたい。
『単刀直入に言います、今すぐ退いてくれません?』
「おお怖い怖い、怪我人だよ?こっちは」
『時間が無いの、お願い』
「…僕が手出ししないのはこのザマだしまあいいだろうけど、ラヴクラフトはそうはいかないと思うよ」
『…連れて帰ってもらえませんか』
最後の頼みの綱は、そこにしかない。
武器を置いて、膝をついて、頭を下げて頼み込む。
「、君…そんなことをしなくても、強いんだろう?何をそんな…馬鹿なことはやめてくれないか、君はトウェインの大切な人だろう」
『お願いします…私があげられるものだったらなんでもあげるから、お願い…』
「いいから頭上げなって…!!!」
瞬間、とてつもない風圧が突き抜けてきた。
それと共に背筋が凍りつくような感覚に苛まれ、私に終わりを告げる声が聞こえたような気がした。
満月に向かって大きく変化する彼は、やはりそもそもが人間という存在ではなかったらしく…ともすれば必然的に、あの人もそれに対抗するしかなくなるわけで。
「ラヴクラフト、…?…って、ちょっ、君!!?」
全速力であちらにむけて、駆け出して。
中也さんが覚悟を決めきってしまう前に、間に合ってと。
『…ッ、中也!!!やめて、お願い!!!!』
「っ、リア!?おまっ…危ねえから離れてろ!!」
『やだ、使わないでっ!!使っちゃやだッ!!』
「じゃああれはどうすんだよ!?後がねえだろ、いいから太宰の奴とどっかに隠れ『何でも言う事聞くから、ぁっ…お願いッ、!!!』ッ、…俺が今ここで力使わなかったら、一番危ないのはお前だろ!!?」
彼の言い分は最もで、このまま早く使わなければ順番に相手にやられていき、最終的に私が対処したところで良くて私が、最悪全員この場で死を共にすることになる。
『っ…、ちゅうや、…さ…ッ』
「……誰も死なねえ、安心しろ。お前は勿論…俺も死ぬつもりねえからよ」
不意に、唇に触れられるのがほんの一瞬に感じられて。
そのまま時間が止まってしまえばと、何度願った事だろうか。
