第9章 ヘイアン国
ローに遅れてベポたちが駆け込んでくる。ベポに抱きつかれ、は「揺らさないで、変な薬飲まされて気持ち悪いの……っ」とめそめそ泣いた。
「なんでいっつも目を離すと変な薬飲まされてるんだよ!」
ローの気持ちをペンギンが代弁し、「好きで飲んだことなんて一回もないもん!」とに泣かれてうろたえる。
黒いキツネ面の男は、奇妙なことにベポたちの登場に動揺した。刀をしまい、仮面の下で小さく嘆息する。
「その刀――」
黒いキツネ面の持っていた刀を見て、マリオンが顔色を変えた。
「戻ってくるとは思わなかったよ。マルガリータは元気か?」
声は若い男のものだった。彼はゆっくりと仮面を外す。そこにあったのはマリオンと瓜二つの顔だった。
「兄貴……」
86.マリンフォードの恋事情
「そこの大将さん、ちょっと顔貸してくれない?」
海軍本部の街マリンフォードで青キジ・クザンが呼び出しを受けたのは昼食時の食堂でのことだった。
「あらら。これって告られるか、殴られるかどっちかのパターン?」
どっちでも断ると面倒そうだと、クザンはトレーを持って素直にモア・ロッティ大佐の後に続く。
「……友達の話なんだけど」
食堂の隅で、ロッティは深刻な様子で話し始めた。「はいはい」とクザンは昼食を食べながら耳を傾ける。海軍本部の名物・シーフードカレーは中々どうして格別だ。
「…………」
話を切り出したはいいものの、珍しく本当に深刻な様子で黙り込んだロッティに、さすがのクザンもカレーを食べる手を止めた。
「ちょっと……どうしちゃったのロウちゃん」
小さな頃から知っている娘のらしくない態度に、心配してクザンは声をかけた。
ニコ・ロビンにやたらと肩入れしてしまうのも、ロッティと同い年だからだ。かたやセンゴクさんの養女として基地に出入りするころから成長を見ていた娘と、8歳で身よりもなく海に放り出され、海賊に付き従って身を守ろうとしている女を思うと、どうしたって胸が痛む。
「……友達が、どうもこないだ酔って記憶飛ばして、気づいたら知り合いとベッドにいたらしいの」
予想外の相談にあやうくコーヒーを吹くところだった。
(えええ、そういう相談……)
しかもその「友達の話なんだけど」って明らかに自分の話のパターンじゃないか。