第5章 マスカレード
・
テヒョン様と適当に周りの大人たちを躱してナハティガルを後にした。居酒屋でいいよね?なんてニカッと口を四角くして笑う彼はさっきまで妖艶な雰囲気を纏っていた人だとは信じ難いほど。
居酒屋に向かうタクシーの中で、無駄に着飾っていた堅苦しいドレスをテヒョン様の目など気にせずに脱ぎ捨てて、いつもの動きやすいスーツ姿に戻る。
『へえ、君の普段ってこんな感じなんだ?』
「ええ、」
彼は相変わらずの笑みを浮かべていた。
・
居酒屋について、適当に焼酎を頼む。
『わぁ、女の子が最初から焼酎なんて凄いね』
なんてまた楽しそうに呟いた彼も同じように焼酎を頼んだ。
お互いのものが届いて、お疲れ様とグラスを合わせる。
グビっと煽るとさっきまで気を張っていたのか、喉に流れる水分がとても心地よかった。そのまま2杯、3杯と気がつけば私にしては珍しくベロベロに酔っていたようで。
テヒョン様に介抱されながら、いつの間にか自分のマンションに着いていた。
私を抱き抱えたテヒョン様は、私のバッグからカードキーを取り出してエントランスに当てる。そのままエレベーターに乗り、私の部屋へと連れて来てくれた。
帰り際、彼はあの時のように妖艶に笑って言ったのだ。
『また、今度楽しみにしてるね?』
って。
~ fin ~(これ、また続き書くかもしれません)