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片付けられない

第1章 人生なんてチョロい


その後僕は真っ赤に染まる夕焼けの帰り道を1人で歩いていた。するとさっき僕のメガネにボールをぶつけた奴が女の子と帰っていた。僕はその時委員会帰りだったのだ。文化祭実行委員だった。なぜこの委員会に入ったかというと、好きな女の子がいたからだった。彼女の名前は小宮さんといった。9月の初めの委員会決めの時小宮さんは文化祭実行委員に手をあげた。だから僕も手を挙げた。文化祭実行委員は僕と小宮さんに決まった。そして今日の掃除の時間小宮さんは僕にこう言った。「ごめん、今日の委員会出られなくなっちゃった。」「分かった。」何度も委員会の集まりがあるのにこんなやり取りをするのはこれが初めてだった。このやり取りをした数時間後、夕焼けと共に僕の前に不思議な光景が広がっていた。
なぜ小宮さんは、彼と一緒に??
僕の好きな小宮さんのボブカットと綾瀬くんのワックスをふんわり付けた傷んだ髪が身長差になって黒いシルエットになっていた。
ぼうっと2人のシルエットを見つめていると後ろからガタイのいい体操着野郎が走ってきてこう叫んだ。「おーーいお前らもっと端歩けよー!イチャイチャが移るだろ〜!!」ガハハハと心臓に悪い音量で叫んだ体操着野郎は前方へ消えて行った。
状況を理解した僕は急に胸が苦しくなったが、さすがにいきなり2人を抜き返すことも出来ず、かといってあからさまに歩む速度を遅らせるのも嫌なのでさっきと変わらず2人と1,5メータ挟んで歩いていた。しかし人というのは残酷なもので、聞きたくなくてもに自分に関心のあることは耳に入るようになっている。急に先程までは聞こえなかった彼らの会話が聞こえてきてしまった。「でも良かった、良いって言って貰えて、俺さ、本当に無理だと思ったんだ」「…そうなんだ。」「俺、小宮さんはタケル君のことが好きだと思ってたから。」「…タケル君は、ただの委員会が同じってだけだよ」「そっか、よかった。」―――何故こんなにもハッキリと聞き取らなければいけなかったのか。しばらく歩くと小宮さんは右の小道に曲がった。彼は僕と同じ方向に真っ直ぐ歩いていた。僕はもういいだろうと足を早めた。すると彼を横切る際、こんな言葉が聞こえた。「選ばれたのは君じゃなくて僕だったね。」
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