第4章 悪魔と、死神と、切り裂きジャック
きれいに拭き終えると、アンダーテイカーが抱き上げ安置所まで運ぶため、マリアンヌは手袋を外し先まわりをして、白いワンピースドレスを用意して待機をする。
2人で服を着せてやると、最後にアンダーテイカーが死化粧をして終了だ。
「ヒッヒッヒッ、今日もキレイに仕上がったね。明日のお迎えまでは、ここでいい子にしていておくれ〜」
両手を胸の上で組ませ棺の蓋をしめると、2人は安置所のカギをかけて地下室を後にした。
──午後──
昼食を終え再び店に戻ると、アンダーテイカーは時計を見ながら呟いた。
「さ〜て、そろそろ来る頃かな〜?」
「(え?誰かいらっしゃるご予定なんですか?)」
そんな予定など聞いていなかったマリアンヌは誰が訪ねてくるのか聞いてみた。
「すぐにわかるさぁ。でも約束をしている訳ではないから今日来るかどうかは分からないけどね〜」
なんともはぎれの悪い返事だ。
でも(生きてる)お客さんが来るのであれば、少し外回りでも掃除しておこうかと、マリアンヌは箒とチリトリを用意し店の外まで出ていった。
──シュッ、シュッ──
まわりを見渡せば、さすがにシーズンだけあってロンドンの街並みは賑わいを見せていた。
貴族を乗せた高級な馬車がたくさん往来している。
しかし、そんなシーズンなど、マリアンヌには無関係だ。とりあえずは店の周りに巣食ってる蜘蛛の巣を取り払おうと箒を持ち上げた時だった。
「君の事だね……裏の情報を売ってくれるというのは。」
背後からかけられた妖しげな声に振り向くと、そこには見た事もない男が品定めするかの様にマリアンヌを見ていた。服装から判断すると、英国の人間ではなさそうだ。
「(だ…誰?)」
すぐにアンダーテイカーを呼びたかったが、身体が金縛りの様に動かない。
どうしたらいい。
ジトリと油汗をかいたその時だった。
「で、伯爵ーーー!!ここであってるの??」
先程の緊張感とは打って変わって、この男は自身の背後に手を振り出した。
「ちょっとあんた!!場所分からないくせに先を歩いていたの?!」
今度は赤毛の派手な服装の女が執事をつれて追いかけてきた。
いったい何なのだ……?