第16章 それぞれの真実
「これは…酷いね〜」
地下室も隅から隅までひっくり返すように荒らされており足の踏み場もない。
せめて元あった場所に片付けるくらいはしてくれと、ため息が漏れた。
「やっぱりマリアンヌは店に置いていかなくて正解だったかな…」
大怪我を負ってしまったマリアンヌだが、もし危険だからと店に置いていっていたら確実に殺されていただろう。
「それにしても…オシリスの連中は、小生が大事な情報を店に置いて行くとでも思ったのかね〜?まったく見くびられたモンだ…」
人体蘇生に関する機密情報。
そんなモノ、紙面に残して置いていくわけがないだろう。
大事な情報は全て自分の頭の中だ。
きっと忍び込んだ連中は何も有力な情報を掴むことができず、今頃はボスにこってりと絞られている事だろう…
まったく、ザマの無い話だ。
「(……あぁ……うぅ……)」
急いで地下室の処置台へマリアンヌを寝かせ、負傷した患部を診るアンダーテイカー。
「あの死神が…何が“殺してはいない”だ…このままでは死んでしまう…」
マリアンヌはグレルのデスサイズの刃で背中を斜めに大きく切られていた。
出血量も多い。
このままでは危ない。
急いでマリアンヌの手当をするために、足元がごちゃごちゃと散らかっている中、バタバタと準備を始めたのだが、突然その手が止まる程の衝撃がアンダーテイカーの頭の中を襲った。
ー死にたくない…!!まだ…死にたくない!ー
「……っ!!」
直接頭に響く声に軽く目眩を起こす。
これは、この声は、あの時…3年前のあの冬の雨の降る夜に聞いた声。
喋る事のできないマリアンヌの心の叫びの声だ。
ー私は…まだ生きて、アンダーテイカーさんの側にいたい…!!!ー
「…うっ!!!マリアンヌ……」
頭を抱えながらマリアンヌを見ると、その呼吸はどんどん短く弱くなっていく。
もう時間がない。
いよいよアンダーテイカーが本気で焦りだしたその時だった。