第11章 死神アンダーテイカーの裏の裏
アンダーテイカーと3年程一緒に暮らしているが、マリアンヌはアンダーテイカーの全てを知っているわけではなかった。
地下の応接室へと案内された客の話の内容は分からないし、アンダーテイカーは1人で仕事に出かける時もある。
そして夜に1人で出て行く時もあるのだ。
いつも自分を側に置きたがるアンダーテイカーが、1人で出かけるという事は、それなりの“理由”があるはずだ。
そう考えていたマリアンヌは、しつこく聞くような事はしなかった。
アンダーテイカーがどこで何をしようと、愛している事には変わりはない。
反対に、アンダーテイカーがどこで何をしていようと、嫌いになる理由にはなり得ないため、無理に聞く必要はなかった。
アンダーテイカーとリアンが地下室に行ってから小一時間も過ぎた頃だろうか…
ーカチャー
「…アンダーテイカー…じゃあまた…。」
廊下に続く扉が開くと、リアンは帽子を被り、付け髭をつけて出ていった。
「ごめんよマリアンヌ…せっかく2人きりだったのに。」
リアンを見送り店の扉を閉めると、アンダーテイカーが後ろからそっとマリアンヌを包み込み、耳元で囁いた。
「(あっ、あの…お仕事のお話ですし、アンダーテイカーさんが謝る事は何も…)」
アンダーテイカーの色っぽい吐息が耳の奥を刺激し、マリアンヌの胸をドキドキと高鳴らせる。
「そうなのかい?小生は早くマリアンヌと2人きりになりたかったよ?」
「(あ、あの……)」
「仕事の話も終わったし、小生とベッドに行こうよ?」
マリアンヌの背後にピッタリと張り付き、まわした手でなんの躊躇いもなく胸を掴む。
しかし、まだ店じまいには全然早い。
マリアンヌは一瞬流されそうになってしまったが、ここで流されてしまえば解放してもらえるのは明日の朝だ。
自身の胸を鷲掴みしている手をそっと離すとくるッと振り返り距離をとる。
「(ま、まだお店を閉めるのは早いですよ?私…応接室の片付けをしてきますね!!)」
マリアンヌはそうアンダーテイカーにつげると、そそくさと地下室まで向かって行った。