第8章 死神との生活
そんなこんなで、マリアンヌに手を出す事をしないままの日々を過ごしていたある朝。
アンダーテイカーはいつもと違う様子に気付くと、ベッドから出て早々に着替え始めた。
マリアンヌが家事を担当する様になってからは、朝食の用意ができると、アンダーテイカーの寝室まで起こしに来てくれていたのだが、今日はいつもの時間を随分と過ぎている。
不思議に思ったアンダーテイカーは、身支度を済ませるとマリアンヌの部屋に向かった。
ーコンコンー
ノックをしてみるが、中からあけてくれる様子は無い。まだ寝てるのだろうか……
「マリアンヌ〜?まだ寝てるのかい?」
そこそこ大きな声で呼びかけたが反応がない。
「マリアンヌ?扉をあけるよ?」
一応断りを入れてからそっと扉をあけると、マリアンヌはベッドの横の床に尻をつき膝を抱えて丸まっていた。少し震えてるように見えるが、泣いているのだろうか?
「マリアンヌ、いったいどうしたんだい?」
アンダーテイカーは、目線を合わせるようにしゃがんでから声をかける。
すると、マリアンヌはゆっくりと顔を上げたが、ずっと泣いていたのか目を真っ赤にしながら大粒の涙をこぼしていた。
そして黙ってベッドを指差すと、また顔を伏せて泣き出してしまった。
「ん?ベッドがどうかしたのかい?」
アンダーテイカーが掛ふとんをめくってみると、その真ん中には赤い血で染まったシミができていた。
「なんだ、こんなことで泣いてたのかい?必要な物はドレッサーの1番下の引き出しに入っているし、替えのシーツもあるから何も心配はいらないよ。ほら、顔を上げてごらん。」
アンダーテイカーは替えのシーツを取りに行こうと立ち上がるが、その瞬間にマリアンヌから服の裾を掴まれ動けなくなってしまった。
「ん?どうしたんだい?」
だが、マリアンヌは何を聞いても涙を流したまま首を振って、中々泣き止もうとしない。
アンダーテイカーはある事に気付くと、机の上に置いてあった筆談用のメモ帳とペンをマリアンヌに渡した。