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死の舞踏

第4章 剔抉


「そうそう、貴方達に伝言があるの」
「伝言、ですか」
「ええ。なんでもここに行って来て欲しいそうよ」
んにゃあ、と猫が机の上の紙切れを引き摺ってきた。いちばん近くにいた優凪が手に取る。依頼人の言葉が分かるのかもしれない。

「私からは以上よ。じゃあね」
美女が依頼料をテーブルに置いて去っていく。猫は女性に抱えられたまま、優凪の表情を伺っていた。

……その驚愕に満ちた表情を。


*****

懐かしい。そう思えてしまったのは、ここ最近が余りに平和な非日常だったからか。
優凪は眩しそうに自身の家の入った高級マンションを見上げた。
ーーその最上階。正に彼女が12年間過ごしてきた家だ。

「……む」
動きを止めた優凪を、織田作が振り返る。心配ない、と被りを振ると、織田作は何も見ていなかった様にマンションのエントランスへと歩を進めた。
……大丈夫だ。今の私はひとりじゃない。

二人は大理石でできた豪華絢爛な床を歩き、エントランスを横切る。
純白のエレベーターに乗ると、扉がスーッと音も立てず、閉まった。
入り口とは反対側がガラス製であるからか、遠ざかるヨコハマの街並みが良く見えた。

優凪はエレベーターの手摺に寄りかかり、ぼうっと眺めた。これまで当たり前の様に見てきたその光景を。
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