第24章 〜疑わしきは、誰なりや〜
故に、麻衣なら必ず自分達と協力してくれる。コナンと沖矢はそう信じていたが、その期待は見事に裏切られた
「事情は分かりました。しかし私はその案件に協力出来ませんし、目撃したという黒い人影は無視する事が唯一の解決策です」
「は……」
「それはどういうことです?貴女は黒い人影について何か知っているんでしょう?詮索させられない理由を教えて貰いたい」
麻衣の言動が予想と大きく外れてしまい、それが計算に無かったコナンは意味が分からず間抜けな声をあげて呆けた顔になる。そうして思考がフリーズしている少年の代わりに、少々棘が混じった声音で喋り出すのは沖矢だった。彼とて麻衣の協力辞退は想定外であり、納得いくまで問い詰めなければ気が済まない。そういう不満を露わにした態度を見せる沖矢は、以前公園で起きた事件で麻衣と長義達によって現場捜索が出来なかった事を思い出していた
当時沖矢とコナンは警察達より早く犯人を特定出来ており、麻衣も犯行現場と犯人の様子を時折見ている節があった。自分達には難事件を解決できる頭脳がある、なのに麻衣は沖矢とコナンが介入する事を許さない。協力する事も出来ないという。これで二度目だった、二人が九十九神社で起こした騒動である
少し前に別件で黒の組織に関する協力を要求した事があったが、初対面の沖矢と鬱憤が溜まっていたコナンは麻衣自身から赦されるのが不思議な程の非礼を犯した。協力という名目で手駒のように蔑ろに扱うような企てを講じ、麻衣の護衛達の地雷を踏み抜いたのだ。そして彼女の護衛達の異様な存在感と殺気は只者じゃない確信を持ったが、元は自分達が妙な手口で彼らの掌中の珠を巻き込もうとした
なので未だに少し警戒したくはなるが、結局のところ沖矢達の自業自得なので深く反省してるし敵意もない。揉めるつもりも無かったわけだが、けれど実際に目にする事なく放置を最善策と進言したのは沖矢の不快感を煽った。殺気ではないにしても黒い影が纏うオーラ、あり得ざるその存在は決して無視するべきではない。沖矢がどういうつもりだと説明を求めれば、紅茶で喉を潤す麻衣がカップをソーサーに戻して口を開いた
「……何故とは疑問に思えど、アレには元よりベースと呼べるものが何も無いのです」